collection of works

Publication January- 2024

室蘭.jpg

室蘭 ハヤシシゲミツ A4判カラー36頁

輪西駅から程近い商店街を歩く。
撮影していると一人の老人に声をかけられた。
しばらくの立ち話。この街がたどった栄枯盛衰
を短時間ながら聞かせていただく事ができた。
別れ際、高台を指差し撮影にお勧めである
事を教えてくれた。勧められたとおり私は高台
に向かった。眼下には室蘭の主幹産業である
製鉄所の工場群、白鳥大橋が望めた。
対照的に私の背面には風光明媚なイタンキ浜が広がっていた。
午後からは室蘭駅から中央商店街、港を経由して
母恋まで歩いた。街中でも人は少なかったが
初めて訪れた室蘭の街はどこか懐かしく
まるで遠い日の故郷にたどりついたような
不思議な体験となった。撮影を終えて宿泊地から
程近い老舗焼き鳥店で名物の室蘭焼き鳥をいただく。
ほろ酔いで後にした店の周辺で見た景色は事情があって
一人暮らしをしていた高校時代に過ごした街の記憶と
オーバーラップするのであった。

2024年7月12日 室蘭にて

 

2024-09-03 17:26:49
藤井満博.jpg

moment作品紹介其の31「廃墟」藤井満博 A4判カラー112頁

 本書は、人の手によって作られたものが長い年月をかけ自然へと渡り、本来あるべき姿ではなく

「新しいもの」へとかわっていく様を写真に収めたものである。写真家の藤井満博は

廃墟は「自然へ還る」のではなく「新しいものへと変貌をとげている」と考える。

ここにある写真はその瞬間を写したにすぎないのだ。

藤井の写真を通し、かつてそこにあった人々の営みを当時の様々な情景が染み付いたものから感じとってほしい。

そして、今もなお自然と共に「新しいもの」へとかわっていく廃墟について、是非、貴方ならではの物語をつくってみてほしい。

 

作者キャプションより

2024-10-02 12:08:45
長本表紙1.jpg

PASSERBY 長本淳 A5判 モノクロ 48頁

「私たちは偶然にもこの同じ時間、空間を共有する存在である。 そして、絶えず私たちはそれぞれ時間と空間を移動していく。 長い時間の中で見れば、我々はお互いに一瞬すれ違っているだけだ。」 街に住む猫に作者自身を投影した、一種のセルフポートレート集。

 

2024-10-02 12:17:34
濱田さん新作.jpg

Lieu de mémoire 桜丘町 ハマダユキヒコA4判(変形サイズ)モノクロ36頁

記憶の街
1998年12月、初めて桜丘町を訪れたボクは渋谷駅西口から歩道橋を上がり、正面のビルに掲げられた巨大な壁面広告を見て圧倒された。ドラマ『神様、もう少しだけ』の登場人物である啓吾とカヲルの印象的な 姿。「やはり東京はやる事がオシャレだ」と感心しながら歩道橋を渡り、桜丘町のはずれに住む友人宅へ と向かう。

それから二十年後、再び12月に上京していた時「桜丘町の一部が再開発される」と聞いて驚き、思い出の街 を写真に残さなければという焦燥感に駆られ、訪れることにした。

街の風景は記憶とほぼ変わらないが、渋谷の外れとはいえ人影はまばらで、時雨そうな空や風に吹かれた枯葉が街の雰囲気を一層寂しくさせている。 いたるところにある工事予告の看板には、ー ヶ月後に通行止めになると書かれている。そう、この街はあと少しで姿を消し始めるということなのだ。

もし上京していなかったら、過去の記憶のままだったであろう桜丘町。最後にこの街並みと再会できたことは、悲しくも幸せに思う。
ハマダユキヒコ

●「Lieu de mémoire/記憶の街』について。

直訳「記憶の場所や思い出の場所」

Lieu de mémoireは、歴史的出来事など「忘れがたい記憶」という無形の抽象的なものを具象的に証明する有形の現実的な場所を指す。
それは、フランスの歴史学者ピエール・ノラが著書『Les Lieux de Mémoire』の中で提唱した考え。
今回のタイトルは、「忘れがたい記憶」=記憶の中にある街、「有形の現実的な場所」=桜丘町と考えた。

作者キャプションより

2024-11-01 14:56:43
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